人体は老化します。あたりまえだろ?と思うかもしれませんが、世の中には老化しない生物もたくさんいます。というか、老化するのは有性生殖を行う高等動物だけで、無性生殖をする生き物は「老化」という概念は存在しません。だって、永久に増殖し続けるだけですからね。
さて、我々人間を代表とする高等生物は、多細胞生物で、たくさんの細胞によって生命が維持されています。人体を構成する細胞はその数なんと60兆個。皮膚や消化管などの表面、血液などは古くなった細胞はどんどん死んで行き、新しく分裂によって生成した細胞によって補充されます。
つまり人間のような多細胞生物は個々の細胞の死と固体死は全く異なります。なんて、まーあたりまえの事ですよね。
さてこの古くなった細胞と新しい細胞の入れ替えですが、人体を構成している細胞の多くは時限装置を持っています。これは「テロメア」といいまして、遺伝子の端っこについているものです。分裂した後の細胞は分裂前の細胞と殆ど同じなのですが、少しだけ違いがあります。それはこのテロメアが短くなっているのです。かくして、分裂を繰り返すごとにテロメアが短くなり、テロメアの長さがなくなってしまうと、もはや分裂は起きません。つまりこの時点が細胞の更新による組織の新陳代謝の終焉ということになります。
テロメアと寿命の関係はそれほど直接的では無いようですが、クローン羊のドリーのテロメアは普通の羊よりも短く、老化が早くて寿命も短かったようです。
それではテロメアを継ぎ足せばよいのではないでしょうか?実際テロメラーゼという酵素があり、これはテロメアを長くする作用をもっています。このテロメラーゼが存在すると、いつまでもテロメアの長さが保たれますので、分裂が停止しない、という意味でその細胞群は「不死」になります。
テロメラーゼを持つ典型定期な細胞は生殖細胞です。生殖細胞は実際に子々孫々まで遺伝子を伝えなくてはなりませんので不死でないと困ります。また怖いのはがん細胞もテロメラーゼの活性が高いのです。がん細胞は無制限に増殖し、分裂回数に限りはありません。また最後に血球やその他の分裂によって入れ替わっている組織の幹細胞も少しテロメラーゼ活性があります。
(文:窪田 敏之)
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